歩行とは?
人が普段何気なく行っている歩行は他の動物にはなく、
非常に効率の良い動作となっています。
人は二足歩行を移動手段としており、
力学的に考えると重力を用いた推進系を用いて歩行しています。
簡単に説明すると位置エネルギーと運動エネルギーを交互に使用する戦略を取ることによって非常にエネルギー効率よく歩行を行うことができています。


江原義弘, 山本澄子. ボディダイナミクス入門、歩き始めと歩行の分析. 医歯薬出版, 2002.より引用

江原義弘, 山本澄子. ボディダイナミクス入門、歩き始めと歩行の分析. 医歯薬出版, 2002.より引用
しかし、この歩行が何らかの原因で破綻、または不良動作が起きてしまうと、
身体の各部位への負担が増加してしまいます。
その原因となる要素とその不良動作はどのように改善していくべきなのかを各歩行フェーズに着目して考察していきたいと思います。

初期接地 (Heel strike)
初期接地のフェーズでまず大切になのは踵です。
有名ですが、踵が丸くなっているのは理由があります。(後ほど解説します)
個人的にもクライアントさんには踵の感覚を大切にしてもらうようにしてもらっています。
足底筋膜炎、腸脛靭帯炎などの方のほとんどが踵接地が正しくできていない、または接地はしていてもその次のLanding responseまでの時間が明らかに短かったりしています。ではこのメカニズムについて説明していきましょう。

上の図はHeel Strike〜Mid stanceまでのフェーズを表しています。
まずHeel strikeでは足関節が背屈して、踵から接地しています。
もしここで踵から接地することができなければ、その後の前脛骨筋や大腿四頭筋の運動連鎖をうまく使用することができないため、身体に余分な負荷がかかってしまいます。
その負荷が膝関節や股関節にかかってしまい、障害が起きてしまいます。
歩行時の膝関節の重要性
Heel strike時には膝関節は伸展しておく必要があります。
ここで大切になってくるのが、最終可動域での脛骨外旋or大腿骨内旋(スクリューホームメカニズム)です。
膝関節は伸展することで靭帯機構での安定化作用するようになります。
しかし、Heel strike時に膝関節が伸展できなければ、安定させるために他の部分がそれを補う必要があります。
よく起こってしまうのが腸脛靭帯とLCLです。
膝関節伸展位の状態ではLCLが緊張しており、腸脛靭帯が弛緩している状態です。
しかし、膝関節が屈曲してしまうと腸脛靭帯が緊張し、LCLが弛緩している状態になってしまいます。
そのため、膝関節屈曲の姿勢で初期接地してしまうと腸脛靭帯がより緊張してしまうということにつながってしまいます。
そのため、膝関節伸展ができるように、最終可動域での脛骨外旋or大腿骨内旋を作れることが大切になってきます。

歩行時の股関節の重要性(矢状面)
Heel strike時には骨盤は少し前傾位にある必要があります。
その理由としては、骨盤の臼蓋の一番深いエリアで大腿骨頭からの荷重を受け止めることで関節の剛性を高めることができるからです。
しかし、骨盤が後傾位の姿勢で骨頭からの荷重を受けてしまうと、関節の剛性を高めることができずに、不安定性が出てきてしまいます。また、臼蓋にも負荷がかかることで障害になってしまうことも考えられます。
臼蓋への負担を最小限にするためにも、
歩行中の骨盤の前傾後傾をコントロールすることが重要になってきます。

加えて側方への制動も歩行の制御において重要になってきます。
私自身、クライアントさんの歩行評価の時、
初期接地で大腿骨頭が側方に抜けてしまう方が多くいられました。
この原因として、側方制御のための筋群の機能不全の結果起こってしまいます。
また、股関節の角度によって側方制動の筋が変わります。
1. 股関節の屈曲では大臀筋の上部線維
2. Mid stanceでは主に中臀筋
3. 立脚後期では主に小臀筋
4. 股関節伸展では大腿筋膜張筋
歩行評価でどのポジションで側方制動ができなくなるかによってアプローチする筋が変わってきます。

歩行時の股関節の重要性(前額面)
矢状面での股関節の制御も歩行において重要な要素になります。
特にわかりやすい例として、トレンデレンブルグ歩行考察します。
トレンデレンブルグ歩行とは
患側の立脚期に健側の骨盤が落下することを指します。
トレンデレンブルグ歩行を行ってしまうことによってHeel strike時に臼蓋に大きな負荷がかかってしまうからです。
そのメカニズムについて説明します。
通常の寛骨臼では寛骨臼荷重部傾斜角が水平に近い形であり、剪断力は内方に向かっています。
そのため、骨頭が関節臼に押し付けられるようなベクトルに向いています。
しかし、
トレンデレンブルグ徴候のある股関節は寛骨臼荷重部傾斜角が大きくなり、骨頭が臼蓋の内方ではなく、上外方への剪断力が上がってしまっています。
そのため、歩行時の股関節は平行をキープする必要があるということになります。
そのためにも、
骨盤を安定させる筋群の強化や大腿骨頭を臼蓋に引きつける筋群の強化が必要になってきます。

歩行時における足関節の重要性
Heel strike時の足関節で重要になってくるのがRocker functionの中にあるHeel Rockerです。
Rocker functionは3種類の回転軸を指しています。
1. Heel strike〜Mid stanceまでのHeel rocker
2. Mid stance〜Terminal stanceまでのAnkle rocker
3. Terminal stance〜pre swingまでのForefoot rocker
それぞれが効率よく歩行するための重要な役割を持っています。

今回はHeel strike〜Mid stanceのHeel rockerを説明します。
Heel strikeで踵が接地すると踵の丸みを支点として、前方に回転します。
その際に前脛骨筋、大腿四頭筋などの筋は遠心性収縮を行い、衝撃を吸収します。
そのため、踵から接地し、ヒールロッカーをうまく使うことが重要になってきます。
もし、踵接地できずに回転をうまく利用できなければ、衝撃の負荷が身体にかかってしまうことになります。そして、その負荷が膝や股関節にかかってしまい、障害になってしまう可能性が出てきてしまいます。
歩行の際は初期接地は踵から接地することが非常に大切になってきます。
今回のまとめ
膝関節
Heel strike時に膝関節伸展ができるように、
最終可動域での脛骨外旋or大腿骨内旋を作れることが重要
股関節
歩行中の骨盤の前傾後傾をコントロールすることが重要
側方制動向上のための筋力強化が重要(股関節のポジションによる)
骨盤を安定させる筋群の強化や大腿骨頭を臼蓋に引きつける筋群の強化が重要
足関節
初期接地は踵から接地することが重要
参考文献
Pirker, W., & Katzenschlager, R. (2017). Gait disorders in adults and the elderly. Wiener Klinische Wochenschrift, 129(3), 81-95.
江原義弘, 山本澄子. ボディダイナミクス入門、歩き始めと歩行の分析. 医歯薬出版, 2002.
Bonnefoy, A., & Armand, S. (2015). Normal gait. Orthopedic Management of Children With Cerebral Palsy: A Comprehensive Approach, 567.



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