【もっと深く知る】頭板状筋・頚板状筋

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Anatomy

頸部筋シリーズ第3弾として、

「あまり認知されないが、大切な頸部の筋ランキング第2位になるであろう筋

頭板状筋・頚板状筋

今回はこの筋を深く知っていこうと思います。

みなさまの中でこの頭板状筋・頸板状筋はどのような印象をお持ちでしょうか?
・いや、あんまり知らない
・聞いたことはあるけど、あんまり知らない
・首の後ろの筋

このような感じでしょうか?(恥ずかしながら私もそんな感じです笑)

ではこれらも含めて今回はこの頭板状筋・頸板状筋を一緒に紐解いていきましょう。
では、いざ頭板状筋・頚板状筋の世界へ参りましょう。

とその前に
今回は
基本的な頭頸部の関節をおさらいしておきましょう。

頭頸部の関節

頸部の解剖を理解するためにはまず3つの関節を理解する必要があります。
1. 環椎後頭関節 2. 環軸関節複合体 3. 第2-7頸椎間の椎間関節

では一つ一つ見ていきましょう。

1. 環椎後頭関節

環椎後頭関節は環椎(C1)に対して頭蓋が独立して動くことを可能にしている関節です。
この関節は後頭骨の突出した後頭顆が環椎上関節面の凹みとで構成されており、
関節の前方は前環椎後頭膜に覆われており、後方は後環椎後頭膜に覆われています。
この凹凸を利用して頭頸部の動作を可能にしています。

この環椎後頭関節の主な動作は屈曲と伸展(屈曲約5°・伸展約10°)・側屈(約5°)であり、回旋動作には制限されています。

2. 環軸関節複合体

環軸後頭複合体は2つの要素(正中環軸関節と一対の側方の椎間関節)で構成されています。
正中環軸関節は軸椎の歯突起(C2)が環椎の前弓と横靭帯によって形成された骨-靱帯輪を突き抜けて形成されます。
正中環軸関節は前方と後方に2つの滑液包をもち、この2つの滑液包が水平面の安定性に大きく寄与しています。(環椎横靱帯)環軸関節の2つの椎間関節は軸椎の上面と環椎の下面との間で形成されています。

この環軸関節複合体の構造では、頭頸部内の水平面で起こる回旋の約50%が起こります。
主な動作は屈曲と伸展(屈曲約5°・伸展約10°)・軸回旋(約35-40°)であり、側屈は制限されています。
環軸関節複合体でできない回旋は頸椎内関節によって行われます。

3. 第2-7頸椎間の椎間関節

C2-C7の椎間関節の関節表面は前額面と水平面のほぼ中間の45°の傾斜を持ちます。
この関節は環椎後頭関節や環軸関節複合体と違って3平面の動きが可能です。

主な動作は屈曲と伸展(屈曲約35-40°・伸展約55-60°)・軸回旋(約30-35°)であり、側屈(約30-35°)です。

ここまでが基礎的な頭頸部の関節の解説でした。

では、ここからが本題の頭板状筋・頸板状筋になります!!

では、まずは基礎解剖から見ていきましょう。

頭板状筋・頚板状筋の基礎解剖

いつも恒例ではありますが、基礎解剖から見ていきましょう。

頭板状筋・頚板状筋のコリ??

ネットで頭板状筋・頚板状筋と検索すると….
「頭板状筋・頚板状筋をほぐして首こりをとります!!」

という感じの記事やサイトが多く出てくるかと思います。
果たして、それはどうなのでしょうか?

確かに、僕自身も頭板状筋を少しモミモミすると心なしか気持ちよくなった気もします。
みなさん気になりませんか?

その辺りも含めながら考えていきましょう。

そもそもコリとはなんでしょうか?
私の理解の範囲では「筋の過緊張=コリ」と思っています
(残念ながら、わたくしは筋膜というものをあまり理解できておりません…)

この過緊張をなくしてあげることが即効性のあるもの
いわゆる ”ほぐし” なのではないかと考えています。
(もちろん、筋の癒着除去やIa抑制・Ib抑制もあるとは思いますが”ほぐし”ではありません。)

しかし、その緊張を“ほぐした”としてもそもそもの運動パターンや習慣がそのままでは時間が経つにつれてまた過緊張をおこしてしまいます。

そして、この過緊張を根本的に解決することができるのが、
感覚統合訓練新たな運動パターンの学習つまりは広い意味での運動になるのではないかと思います。
(もちろん組織的な破綻などの場合は解決できないですが…)

過緊張してしまう原因は様々だと思いますが、
その判断や評価も含めて根本的な解決を行う上では必要不可欠になりそうですね。

頭板状筋・頚板状筋のバイオメカニクス

先ほどの章でありました頭板状筋・頸板状筋
“コリ”

なぜこのコリが生まれてしまうのかをバイオメカニクス的に考えてみましょう。

頭板状筋・頸板状筋に”コリ”を発生させてしまう原因は、
過度な筋の緊張であり、そうせざるを得ない状態にあるということです。

その典型的な状態がいわゆるフォワードヘッド姿勢ではないかと思います。

この姿勢を改善できるようにすることが根本的な解決につながるのではないでしょうか?

頭板状筋・頸板状筋とフォワードヘッド

まずは1つ文献を紹介しましょう。

この文献は、
フォワードヘッドの人とそうでない人を対象にした
頸部のProtractionとRetractionをEMGで測定した研究です。

その結果を表した表がこちらになります。

Lee KJ, Han HY, Cheon SH, Park SH, Yong MS. The effect of forward head posture on muscle activity during neck protraction and retraction. J Phys Ther Sci. 2015 Mar;27(3):977-9. doi: 10.1589/jpts.27.977. Epub 2015 Mar 31. PMID: 25931773; PMCID: PMC4395757.から引用

なるほどなるほど、、、
上から
胸鎖乳突筋(SCM)・頭板状筋&頸板状筋(Splenii)・Upper Trapezius(僧帽筋上部)・Middle Trapezius(僧帽筋中部)になります。
全体的に見てもわかるように、
FHP(フォワードヘッド)の方が全体的にEMGの数値が低いことがわかると思います。
つまりは、適切に筋を収縮して動作を遂行できていないということになると思います。
言い換えると他の筋を代償してその動作を行っていると言えますね。

この文献の考察でもありましたが、
筋が正しいポジションにないため、正しく収縮できていないのではないかと思います。
筋の力-長さ関係ですね。

もう1つ文献を紹介します。

Linらのこの文献では、
ご献体を使用してフォワードヘッドの頸部筋を調査したものです。
この文献では、フォワードヘッドの人では通常の人よりも頸板状筋の筋長があったとされています。

Lin G, Wang W, Wilkinson T. Changes in deep neck muscle length from the neutral to forward head posture. A cadaveric study using Thiel cadavers. Clin Anat. 2022 Apr;35(3):332-339. doi: 10.1002/ca.23834. Epub 2022 Jan 25. PMID: 35038194.より引用

この文献の内容からも頸板状筋の筋長が長いため正しく収縮できないことが想像できます。
今回は言及しませんが、後頭下筋群は短縮位になっていますね。

まとめ

今回は、
頭頸部の関節についての復習と頭板状筋・頸板状筋を紐解いてみました。

胸鎖乳突筋や斜角筋は問題視されやすい筋ですが、
今回は少しマイナーな頭板状筋・頸板状筋をピックアップしてみました。

頭板状筋・頸板状筋と検索するとたくさんのサイトが出てきますが、
なかなかその正体がわからなかったので今回は調べてみました。

ものごとには何か原因があり、その原因を特定して
包括的なアプローチで解決していくことが大切です
ね。

次回は頸部の筋シリーズで1番最大の強敵
“後頭下筋”について紐解いていきたいと思います。
(いやー次は長くなりそうだ)

参考文献

1.
Lee KJ, Han HY, Cheon SH, Park SH, Yong MS. The effect of forward head posture on muscle activity during neck protraction and retraction. J Phys Ther Sci. 2015 Mar;27(3):977-9. doi: 10.1589/jpts.27.977. Epub 2015 Mar 31. PMID: 25931773; PMCID: PMC4395757.

2.
Lin G, Wang W, Wilkinson T. Changes in deep neck muscle length from the neutral to forward head posture. A cadaveric study using Thiel cadavers. Clin Anat. 2022 Apr;35(3):332-339. doi: 10.1002/ca.23834. Epub 2022 Jan 25. PMID: 35038194.

3.
Neumann DA:筋骨格系のキネシオロジー,第 3 版.有馬慶美・他(監訳),p726,医歯薬出版,2018.

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