【もう少し深く】腸腰筋を理解する

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Anatomy

今回は腸腰筋について書いていきたいと思います。

皆さんの腸腰筋のイメージはどんな感じですか?
なんか色々とややこしい筋肉?
足をあげるために重要な筋肉?
ウサインボルトの腸腰筋はやばい?
横隔膜と繋がっている?

まぁーややこしい筋肉ですね笑
なぜ人間にはこんなややこしい筋肉があるのでしょうか?

今回はこの少しややこしい腸腰筋を少しずつ紐解いていきたいと思います。

基本的な解剖(大腰筋・小腰筋・腸骨筋)

大腰筋・小腰筋・腸骨筋それぞれの筋の解剖を考える前に、
なぜこれらの筋が総称されているのかをみていきましょう。
まず大腰筋・小腰筋と腸骨筋を総称したものをiliopsoas musculotendinous unit (IPMU)と呼びます。
このUnitが一般的にはiliopsoas muscle(腸腰筋)と呼ばれます。1)
ただ、小腰筋は機能的にも弱く、存在しない場合も多いので、一般的には大腰筋・腸骨筋を腸腰筋と言います。ただし、この小腰筋も大腰筋の安定化(主に骨盤前方縁)に寄与しているのではないかと考えられている。3)
大腰筋と腸骨筋は通常同時に活動することが多いと言われています。
しかし、特定の動作や姿勢ではこれらの筋活動は変わってきます。
歩行では、毎秒2m以上の歩行動作ではそれ以下での速度と比較して、大腰筋と腸骨筋の筋活動が急激に増加したとされています。
また、腸骨筋と大腰筋の骨盤前方縁の上を乗り越えたあと、約35-45°後方に向きを変えます。

では、ここからそれぞれの筋の解剖を見ていきましょう。

今回は色々文献を見比べながら、私なりにまとめてみました。
文献によって起始停止が少し違ったり、機能が違ったりしてい他のですが、一応まとめて見ました。
こんな感じで見てみると実際に解剖学実習に行くべきだなと思いますね。
アメリカ時代に下肢の解剖実習には参加しましたが、体幹部もしといたらよかった…

腸腰筋の機能低下がもたらす悪影響

では、これらの筋はなぜ大切なのでしょうか?
また、これらの筋が機能低下してしまうとどのような問題が起きてしまうのでしょうか?

まずは大腰筋から見ていきましょう。
大腰筋で考えられることとして、
筋の過緊張・筋力弱化・過疲労・萎縮などでしょうか?

一般的に
大腰筋の機能低下によるElongationが起こってしまうと骨盤の後傾と腰椎の後弯が起こってしまうと考えられ、
逆に過緊張でShorteningが起こると骨盤前傾。腰椎前弯姿勢が起こってしまうと考えられています。
もちろん、
大腰筋が過緊張・機能低下→骨盤・腰椎の変位
OR
骨盤・腰椎の変位→大腰筋の過緊張・機能低下
のどちらかはわかりませんが、
骨盤・腰椎が“ニュートラルポジション”にある状態で尚且つ大腰筋が正常に機能できることが一番大切なのではないでしょうか?
(ここでのニュートラルポジションとは、どちらにも動くことができる状態のことを指します。)

また、
骨盤前傾+腰椎伸展姿勢は大腰筋と脊柱起立筋の短縮と腹筋群および大臀筋の筋力低下が伴うとされています。
加えて、両側の大腰筋の機能低下は腰椎のKyphosisやSway-back姿勢になり、片側の機能低下は腰椎側湾に結びつくとされています。4)

ここでよくあるギックリ腰について考えていきましょう。
もちろん、ギックリ腰は様々な状態が考慮されると思いますが、ここでは仙腸関節の捻挫として考えましょう。
私の経験上で1番多いと考えられる受傷起点が
「長時間しゃがんだ後に、立ち上がると腰が痛くなった!!」
というのが多いのではないかと思います。

この受傷起点と大腰筋の関係性を考えていきましょう。
まずしゃがむという動作は骨盤後傾・腰椎屈曲の姿勢と考えられます。
つまり大腰筋は伸長された状態であると推測できると思います。
しかし、その状態から急激に立つことによって骨盤前傾・腰椎伸展方向へと移動することになると思います。

伸長位から短縮位に筋が変化することで筋自体にストレスがかかることはもちろんですが、仙腸関節にも大きなストレスがかかると言われています。
腸骨筋の起始もちょうど仙腸関節にあるとされています。
また、
文献ではないのですが、
興味深い内容のHPがありましたので載せておきます。
https://learnmuscles.com/blog/2017/08/17/psoas-major-function-9-psoas-major-sacroiliac-joint/
ここで言われていることとしては、
大腰筋の起始停止と筋をbowstringing(弓)と考え、起始停止の位置が変わらずに筋の緊張が増えれば、そのストレスは弓の中心にきます。
そして、その弓の中心が仙腸関節にあたる大腰筋と仙腸関節の関係は大きいよね!!
ふむふむ!!という内容ですよね。
ちなみにこのリンク先のブログすごく面白いです。おすすめです笑

https://learnmuscles.com/blog/2017/08/17/psoas-major-function-9-psoas-major-sacroiliac-joint/から引用

次に腸骨筋を見ていきましょう。
しかし、大腰筋と違って腸骨筋自体がそこまで悪影響があるというものは少ないのです。
というのも腸骨筋のみの機能低下という文献がないのです。(僕のリサーチ不足かもしれませんが…)
多くは大腰筋との共同筋として書かれていますし…

しかし、腸骨筋は大腿骨に対して骨盤を前傾にする機能があるので、
大腰筋と同様の注意が必要な筋ではありそうです。
よく聞くのがLower crossed syndromeでしょうか?
いずれにしても、大腰筋と同様に適切な評価をして、適切なアプローチをする必要がありそうですね。

https://creeksidechiro.com/lower-crossed-syndromeより引用

私の愛書である、筋骨格筋系のキネシオロジーにすごくわかりやすい図がありました記しておきます。

Donald A. Neumann, (2017)『筋骨格筋系のキネシオロジー原著第3版』P549 図12.29 (Paul D. Andrew・有馬慶美・日髙正巳訳)
医歯薬出版を参考に筆者が作成
楽天ブックス
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腸腰筋と姿勢制御 (ヒップストラテジー)

腸腰筋は姿勢制御に大きく関わっています。
もはや腸腰筋=姿勢制御といっても過言ではないのでしょうか?笑

まず、姿勢制御には大きく分けて3つの戦略があり、
足関節・股関節・ステッピングの3つのストラテジーがあります。
もちろん、
姿勢制御のためには2つ以上のストラテジーを組み合わせたmixedストラテジーで対応します。
今回は中でも腸腰筋との関係性が深い股関節ストラテジーについて詳しく説明していきます。

姿勢制御では
外乱の大きさによって動員されるストラテジーが異なります。
また、足関節と股関節ストラテジーでは質量重心を支持基底面内に維持するために働き、ステッピングストラテジーは支持基底面を広げて質量重心を支持基底面内に入れるための戦略です。

外乱が小さければ、足関節ストラテジーのみで姿勢制御しますし、
外乱が大きくなれば、足関節と股関節ストラテジーで姿勢制御を行います。
それ以上になればステッピングストラテジーを使用するということですね。
ちなみに、加齢によって足関節と股関節ストラテジーでの姿勢制御機能は落ちてくるので、
転倒のリスクが増えてしまいます。
(視覚(主に周辺視野)も関わってきますが、これはまた別の機会にしましょう。)

では、腸腰筋がどのようにこのヒップストラテジーと関係しているのでしょうか?
福井, 20009)によると、
大腰筋は上半身と下半身をつなぐ唯一の筋であり、姿勢制御には必要不可欠な存在であり、ヒップストラテジーにおいてとても需要な役割を担っていると言われています。

ではもし、大腰筋が正常に機能しないと考えるとどのようなことが起きてしまうのでしょうか?
大腰筋は上記の図のようにヒップストラテジーを利用する時は骨盤の前傾後傾が非常に大切になってきます。そして、腸腰筋は抗重力筋でもあるので、ヒップストラテジーを行う上で必要不可欠であり、機能不良となれば姿勢制御の大きく影響してしまうことが考えられますね。
よくあることが腸腰筋の過緊張でしょうか?
過緊張(ここでは短縮位固定としましょう)が起こってしまうと、骨盤が前傾位になってしまいます。
そして、そこから後傾に移動できなくなってしまいます。(ニュートラルポジションではない)
この状態になってしまうことが転倒などにつながってしまうと考えられます。

ただ単にトレーニングする・ストレッチするのではなくて、
その筋が適切に収縮・伸長できる状態を作っていくことが大切であると思います。

姿勢制御といえば、
もちろんShumway-cookのモーターコントロールですよね。
私が愛読するこの本はすごくおすすめです。

少し高いと言われる方は、
こちらもおすすめです。

参考文献

1)
Anderson CN. Iliopsoas: Pathology, Diagnosis, and Treatment. Clin Sports Med. 2016 Jul;35(3):419-433. doi: 10.1016/j.csm.2016.02.009. Epub 2016 Mar 28. PMID: 27343394.

2)
Lifshitz L, Bar Sela S, Gal N, Martin R, Fleitman Klar M. Iliopsoas the Hidden Muscle: Anatomy, Diagnosis, and Treatment. Curr Sports Med Rep. 2020 Jun;19(6):235-243. doi: 10.1249/JSR.0000000000000723. PMID: 32516195.

3)
Andersson E, Oddsson L, Grundström H, Thorstensson A. The role of the psoas and iliacus muscles for stability and movement of the lumbar spine, pelvis and hip. Scand J Med Sci Sports. 1995 Feb;5(1):10-6. doi: 10.1111/j.1600-0838.1995.tb00004.x. PMID: 7882121.

4)
Cronin CG, Lohan DG, Meehan CP, Delappe E, McLoughlin R, O’Sullivan GJ, McCarthy P. Anatomy, pathology, imaging and intervention of the iliopsoas muscle revisited. Emerg Radiol. 2008 Sep;15(5):295-310. doi: 10.1007/s10140-008-0703-8. Epub 2008 Jun 12. PMID: 18548299.

5)
Sajko S, Stuber K. Psoas Major: a case report and review of its anatomy, biomechanics, and clinical implications. J Can Chiropr Assoc. 2009;53(4):311-318.

6)
Kendall F. P, et al:Muscles(3rd ed.), Williarns&Wi]kins,177− 234(1983)

7)
Neumann DA, Garceau LR. A proposed novel function of the psoas minor revealed through cadaver dissection. Clin Anat. 2015 Mar;28(2):243-52. doi: 10.1002/ca.22467. Epub 2014 Sep 16. PMID: 25227908.

8)
Donald A. Neumann, (2017)『筋骨格筋系のキネシオロジー原著第3版』 (Paul D. Andrew・有馬慶美・日髙正巳訳) 医歯薬出版

9)
福井勉. (2000). 大腰筋機能の臨床的考察 (< 特集> 二足歩行と大腰筋). バイオメカニズム学会誌24(3), 153-158.

平野和宏, 木下一雄, 千田真大, 河合良訓, 上久保毅, & 安保雅博. (2010). Magnetic Resonance Imaging (MRI) を用いた腸骨筋機能の検討―解剖学的観察を基に―. 理学療法学37(5), 356-363.

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