【もっと深く知る】胸鎖乳突筋

スポンサーリンク
Anatomy

頸部の筋についてこれからしばらく書いていこうと思います。
まずは一番厄介であろうある頸部の筋から紐解いていこうと思います。
その筋は…

胸鎖乳突筋

そう、今回は胸鎖乳突筋を考えていこうと思います。
みなさま胸鎖乳突筋についてはどのようなイメージを持たれてますか?
・フォワードヘッドの原因
・過緊張を起こしやすい
・女性の胸鎖乳突筋は美しい…?
などなどあると思います。

そんな超魅力的な筋である胸鎖乳突筋を今回は一緒に紐解いていきましょう。

では、まずは基礎的な解剖から見ていきましょう。

胸鎖乳突筋の基礎解剖

僕の学生時代は、
えっ?
右の胸鎖乳突筋は左を向くときに使うの?ややこしいなー…
と思ったりしていましたね笑
皆さんも思いませんでしたか?

ではもう少し詳しく胸鎖乳突筋を見ていきましょう。

実は4つの筋走行がある!?

まずは胸鎖乳突筋の筋構造に着目しましょう。
胸鎖乳突筋は4つの筋走行を持っていると言われています。
以下の図がその走行を簡単に表したものになります。

一般的には2つに分けられる胸鎖乳突筋ですが、もっと詳しく見てみると実は4つに分かれていたりするんですよね。
そこまで深く知ることが必要だとは思いませんが、知っておいても良いのかな?って
個人的には思っています。

また胸鎖乳突筋の筋繊維の割合を研究した文献もありました。
Cvetko1)らの研究では嫌気性繊維・白筋の割合は約65%で好気性繊維・赤筋は約35%であるとしていました。加えて、環境は加齢によっても変化することも考察されていました。
より深く考察してみるとよりこの筋が魅力的に見えますね。

副神経はとても複雑です…

さてさて、
では、次は胸鎖乳突筋の神経支配について考えていきましょう。
胸鎖乳突筋は副神経と頸神経の分枝(C1-3)の2つの神経支配を受けています。

ここで注目したいのが副神経です。
副神経(Accessory nerve)は脳神経の第11脳神経であり、
喉頭の横紋筋(内枝)と胸鎖乳突筋・僧帽筋(外枝)を支配している神経です。

この副神経というものがなかなか厄介な神経であり、
私自身調べながらへーそうなのかーっとなっております。
では、見ていきましょう。

副神経は2つの神経根を持ち、
延髄根と脊髄根から構成されています。
延髄根からの副神経は舌咽神経と迷走神経とともにである頸静脈孔へ向かい、
頸静脈孔を経て、迷走神経と合わさります。そして、軟口蓋、咽頭、喉頭、食道の横紋筋を支配します。この枝は副神経の内枝と言います。

小脳半球脳幹摘出後の頸静脈孔と下位脳神経,第9脳神経と第10,11脳神経束が硬膜で隔離されている

もう一方は脊髄根からの副神経に合わさって胸鎖乳突筋と僧帽筋に入っていきます。
この脊髄根からの副神経を外枝といい、これが胸鎖乳突筋を支配しています。

ちなみに、
一般的に遠心性の信号、つまり運動神経しかないと言われていますが、
一部では感覚神経もあるのではないかと言われたりしているそうです。

総頚動脈には気をつけましょう。

ここはトレーナーや治療家の先生方が一番気をつけるところではないでしょうか?
総頚動脈は皆さんよく聞くことがあるとは思いますが、
胸鎖乳突筋を触診する際には1番気をつけるべきでしょう。

頚動脈は胸鎖乳突筋の内側にあります。
そのため、胸鎖乳突筋の内側部を圧迫することは極力避ける方が良いでしょう。

胸鎖乳突筋の動作について

次は胸鎖乳突筋の動作について考えていきましょう。
胸鎖乳突筋は頭頸部の高さによって屈曲、あるいは伸展することができます。
大体C3より下位の胸鎖乳突筋は内-外軸の前方を走行するのに対して、
C3より上位の胸鎖乳突筋では内-外側の後方を走行しています。
胸鎖乳突筋が共に作用すると中位から下位頸椎に対しては屈曲トルクを及ぼし、環軸関節並びに環椎後頭関節を含めた上部頸椎には伸展トルクが作用します。

このメカニズムが顕著に出ているのが頭部の前方突出、つまりは”フォワードヘッド“です。
フォワードヘッドの姿勢は胸鎖乳突筋にとって収縮しやすいポジションであり、
そのため過緊張状態を起こしやすい筋であると推測することができると思います。

Neumann, D. A. (2016). Kinesiology of the musculoskeletal system-e-book: foundations for rehabilitation. Elsevier Health Sciences.から引用

実際にフォワードヘッド姿勢の方を対象にした研究2)では、
頭部の側屈・回旋動作において、
フォワードヘッド姿勢の人は健康な人と比較して、
胸鎖乳突筋のMuscle activation(筋活性率?)が高いことが記されています。

また、相対的な筋のアンバランスも指摘されています。
頭頸部は前後の適切なバランスによって保たれる必要があります。
そのバランスの破綻が最も見られるのが胸鎖乳突筋になります。

その一例として、
慢性的な頭部前突による肩甲挙筋や頭半棘筋などの伸展筋群へのストレス過多が考えられます。
伸展筋群のストレスが長期にわたって起こってしますと、筋群の疲労や胸椎の屈曲固定、腰椎の伸展固定などさまざまな問題が考えられると思います。

さまざまな文献を見ていますが、
これだ!!といってフォワードヘッドの原因であると断言されているものはありませんでした。
スマホの普及やコロナ禍による屋内での活動増加、視力の低下などさまざまな要因が重なった結果、姿勢不良となってしまうのではないかと考えられます。

そして、長時間の頭部前突姿勢により、
脳はその姿勢を自然な状態と認識してしまうことのより、
その頭部前突という位置で姿勢バランスを取ろうとしてしまうことによってさまざまな身体的不良が起こってしまうのではないかと考えられます。

やはり、
身体的な評価を適切に行なって、
包括的なアプローチを行うのが良いのではないでしょうか?

頭頸部のアライメントをどう修正する?

今回の胸鎖乳突筋に関して頭頸部のアライメント修正を考えると、
まずは胸鎖乳突筋の過緊張を抑制することが大切になってくると思います。
(視覚・体性感覚・前庭覚などのアプローチから食事、慢性的なストレスなどの根本的な原因を解決することが大切です。)

では、どのようなアプローチを胸鎖乳突筋に行えば良いのでしょうか?
もちろん、一概にこの方法を試してくださいなんてとても怖くて言えませんので、
適切に評価をした上で行う必要があるとは思いますが、、、。

頸長筋や頭長筋の活性を高めることによって胸鎖乳突筋の緊張を抑制する方法が考えられるのではないかと思います。
頸長筋や頭長筋などの頸部屈曲筋は頭部前突姿勢で弱化しやすいと言われています。
頭部前突姿勢の継続によって弱化してしまっている筋に対して適切な収縮を促してあげることが良いのではないでしょうか?
それに付随して、前鋸筋や僧帽筋中・下部繊維などの収縮を促すとさらに良いと考えられます。

過緊張している筋の緊張抑制を行い、弱化している筋を活性させてあげることができれば頭頸部の適切なバランスが取れるのではないでしょうか?

https://healthjade.net/cross-syndrome/から引用

まとめ

頸部のアライメントを適切な位置に戻してあげることはまず初めにするべきことであると思います。
そして、姿勢認識の改善や選択的な筋の活性化が行えるようにしていくことができれば根本的な解決につながるのではないでしょうか?

また、
頭頸部にのみアプローチするのではなく、
包括的な評価とアプローチを行うことでクライアントさんや選手の問題を解決してあげるのが重要なのではないでしょうか?

参考文献

1)
Cvetko E, Karen P, Eržen I. Myosin heavy chain composition of the human sternocleidomastoid muscle. Ann Anat. 2012 Sep;194(5):467-72

2)
Kim MS. Neck kinematics and sternocleidomastoid muscle activation during neck rotation in subjects with forward head posture. J Phys Ther Sci. 2015;27(11):3425-3428. doi:10.1589/jpts.27.3425

3)
松島俊夫, 勝田俊郎, & 吉岡史隆. (2015). 頸静脈孔・舌下神経管近傍の臨床解剖. 日本耳鼻咽喉科学会会報118(1), 14-24.

4)
Lloyd S. Accessory nerve: anatomy and surgical identification. J Laryngol Otol. 2007 Dec;121(12):1118-25. doi: 10.1017/S0022215107000461. Epub 2007 Sep 25. PMID: 17892604.

5)
Bordoni, B., & Varacallo, M. (2021). Anatomy, head and neck, sternocleidomastoid muscle. In StatPearls [Internet]. StatPearls Publishing.

コメント

タイトルとURLをコピーしました